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甲府家庭裁判所 昭和47年(少ハ)3号 決定 1972年10月07日

少年 M・G 昭和二七・一・二九生

主文

本件申請は、これを棄却する。

理由

(小田原少年院長の申請要旨)

本人は、昭和四五年五月二九日当家庭裁判所において、窃盗非行等保護事件により中等少年院送致の決定を受けて、多摩少年院に入院したが、同院に在院中の同四七年二月一五日同家庭裁判所において、同年一一月二八日までの収容継続決定を受け、その間同年四月二六日以降は小田原少年院に移送収容されているものであるが、以下の理由により、収容継続の必要がある。

本人は、極めて自己中心的で即行性が強く、気分にむらの多い性格であるが、昭和四七年七月一日最上級に復級し、保護観察のもとで責任ある行動がとれる程度に矯正されたものと認められる。しかしながら、入院前はバー等のボーイ、バーテンをしていたもので、交友範囲が広いうえ、シンナー吸引や同棲生活等の不良交友歴があり、これら不良交友関係を断つについては、保護者の監督のみでは十分とはいえないし、要に予定された出院後の職業の運転助手は未経験の肉体労働であることから、その定着性には若干の不安がある。

以上の諸点を総合勘案し、本人については、出院後相当期間にわたつて専門機関による指導と監督が必要であると思料されるので、少年院法第一一条第四項により、昭和四八年四月二八日まで五ヵ月間の収容継続を申請する。

(当裁判所の判断)

調査ならびに審判の結果によれば、本人は小田原少年院等における反覆指導の結果と、本人も年齢的にも次第に成長して、反省と自覚の度を高めてきたことから、その犯罪的傾向も殆ど除去されて、現に最上の第一級に復級するなど、順調に矯正指導の実を挙げていること、

もつとも前示本人の従前の性格と生活態度に徴するときは、なお一抹の不安もなしとはいい得ないようであるけれども、本人は向上意欲を強くし、その言動にも十分責任を負う気持を回復して、引き続き努力と協調を誓い、また出院後の受入れ態勢については、甲府市○○町所在の××運送店をその就職先と決定しているなど、一応整つており、しかもこれは、担当を予定された保護司において、本人の環境、適性等を考慮したうえ開拓したものであつて、保護観察期間が残り少いとしても、これら関係機関等の指導と援助は十分に期待し得るものであること。

保護者(農業)らは本人とよく疎通し、親密であつて、互いにその出院を待ちわびると共に、保護司らの効果的かつ適切な善導と協力により、その保護能力を強化して、積極的に本人の自主的更生に努めるように決意していることが認められる。

前叙の関係から考えると、その残存保護観察期間(二ヵ月弱)が十分でないとして、再度の収容継続により、これが期間を更に伸長(五ヵ月)するよりは、むしろこの際(但し、本決定の結果の如何にかかわらず、前記昭和四七年一〇月九日限り仮退院となる予定である。)本人は在院生活約二年半に及び、近く二一歳に達せんとしていることから、これを社会に復帰させて、その自覚と努力に期待しつつ、自らの責任において更生の道を進ませるのが相当であると思料される。

よつて、本件申請は理由がないものとして棄却することとして、主文のとおり決定する。

(裁判官 中橋正夫)

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